さわやかな風をうけて



江戸東京たてもの園にて スケッチ入門講座 2004年6月20日(日)実施

キミコ・プラン・ドウ 松本一郎

 梅雨まっただ中の六月中旬、梅雨入り宣言のあった一週間はグズグズをした天気も晴れ間が続き、台風一過、夏のような陽射しでジリジリと肌を焼く日曜日、東京都下、小金井市にある〈江戸東京たてもの園〉でスケッチの入門講座を開催しました。参加者は三十二名。スケッチは全く初めての方も多い中、集合時間の十時半のはほぼ全員が集まりました。
  中は整備され、移築された建物が見やすいように広い歩道が大きな木に囲まれて続きます。まずは、参加者全員で、たてもの園を散策に歩きます。歩きながら「スケッチと言っても、キミ子方式の一点を決めて、となりへとなりへとじっくり描いていくんだよ」と話ながら、また、わらぶき屋根の古い民家の屋根を見ながら「屋根の角のワラ一本を描いて、ちなりのワラ、その隣のワラと描いて行くんだよ」という解説に、目が点になっている人、「〈タワシ〉を描くときと同じようなモノか」という参加者からの声に「そうそう、結局はワラの向きと見える長さの関係なんだよね」と言っても、分かる人はなんとなく雰囲気がわかって来たようです。

  途中、一軒の家の前で、基本的な屋外スケッチの説明をしました。
  「みなさん、キミ子方式の絵を描いている方ばかりなので、普段、教室で描いている絵と、外にでて描く風景の違いは、外ってモノがたくさんあるから、絶対に〈全部〉描こうと思わないのが大事。歩きながら全部描こうと思ったら、歩みを止めないかぎりズーと書き続けないといけないんだから、それよりも、一つのモノを描いて、元気があったらその隣、隣と描いて、いつでも止められるように描いていきます。」その時に、ちょうどタイミングよく、九月に行なう作品展の案内ハガキの見本がありました。そのハガキには、サバの絵の写真が入っているのですが、一枚はサバ一匹全体が写っているデザインと、もう一枚は、サバの顔の部分のアップのデザインです。その二枚のハガキを見せながら「口先から描いて、頭で終わったって、サバの作品。だから〈全部描く信仰〉から抜けましょう。」と説明しました。
  その後、少し歩くと、薪用に大きさを整えた木が積んである小屋がありました。「もし、この小屋を描こうと思ったら、薪の断面を一つ一つ描いていくんだよ。そうしたら、いつかは薪が積んでいる小屋になるんだよ」と話しましたが、それでもまだまだ参加者は目が点になっています。


園内の建物を一つ一つ見ていきながら、後半は、ボンネットバスや路面電車が展示してあるスペースと、宮崎 駿監督作品『千と千尋の神隠し』の温泉宿の見本になった〈子宝湯〉の建物がある街の一角です。今回、千葉から参加して下さった青木静子さんが、川野商店(和傘問屋)の建物の前で「自分が通った中学・高校の同級生の実家がこの家で、その友人の誘いで、よくこの家で遊んだことがある」と話してくれました。もう五十年前の事だそうです。そして、この家を描きたくて今回のイベントに参加したのだと教えてくれました
 その後、経験のある人は建物を、初めての人は、木陰で〈葉っぱ〉のスケッチから始めました。
経験のある人は、自分が描きたいと考えた建物の前に、自分の描く場所を確保してスケッチ開始です。事前に「あんまり遠くにいかないでね」と言っていたのですが、行方が分からない人が二名ほどいましたが、それ以外の人に、一人一人、描いている建物に攻略法を説明して回ります。
  じりじりと肌を焼くような陽射しでしたが、大木の間を抜ける強い風に、さわやかな気持ちいいスケッチになりました。それでも、炎天下の中で描くような場所を選んだ人は、さすがに暑さにバテていたようでした。

 

 


そろそろ昼食かなという頃になって、行方の分からなかった、神奈川から参加の鬼沢さんが「いやー、あれも描きたい、これも描きたいと思うんだけど、結局、自分で決められなくて、まだ描いてないんですよ」というので、路面電車を描いたらと言うと、ちょうど電車の正面にあった木の日陰に場所を決め、路面電車のスケッチを始めました。
 昼食後、初めて組は、村上精華堂の前に移動して、いよいよ建物スケッチに挑戦です。
  〈村上精華堂〉の看板の文字一つから、描きだして、隣、隣へと描いていきます。最初から建物を描いていた人たちは、同じところでズーと描いている人、暑さに負けて、場所を移動する人など、いろいろ。
  それぞれが、とてもうまく描けていて、「いいねー、ステキに描けてるね」と声をかけると、ニコニコ顔で振り返ってくれて、満足している様子が伝わってきました。
  もちろん、川野商店を描いた青木さんも、家紋の入った雨どいを描けて嬉しそう。路面電車に挑戦した鬼沢さんも、ステキにスケッチできていました。また、鍵屋(居酒屋)の暖簾から描き始めた人は、強風の為に暖簾が破けてしまいながらも、係の人も応急処置(ピンで止めただけ)に救われて(?)続きを描くことが出来ました。
  終了時間の三時近くなって、全員で記念撮影をして、その後、残って描く人がいるかと思っていましたが、サッサとみんな、自分の描いたスケッチを抱えて帰っていきました。イベントは天気が命っていう位、天候に左右されますが、天気に恵まれて、楽しい一日になり、また、秋に描きに来ようねといって帰路につきました。