そこまで一気に言うや、彼女の目に涙があふれ、私も泣いてしまった。悲しすぎる話ではないか。
たった一人で絵本を読んでいる少女、絵本を見ながら絵を描く少女、それは過去の私でもある。私はそのことをず−っと守って中学生になって、レンブラント風の暗い自画像ばかり描いていた。その絵を美術の先生が、窓の外を見ながら「君はそんなに憂鬱なのですか?」と言った。その言葉が「私の気持ちをわかってくれている」と、絵を描き続けるエネルギーになった。
それなのに、目の前の女性は、小学校一年生の時以来、絵を描かない人になった。
その彼女が、キミ子方式ならすてきな絵ができるんで、うれしくってと、この福祉園で空の絵ばかり描かせている。 「モヤシもイカもニンジンの絵も教えてあげて下さいよ。いつも見ているものを絵に描くって、楽しいことですよ」
「・・・・自分は母を悲しませる絵は大嫌いになりました。
保母になった時、子どもの絵は心を表すという定説で、心の中にズカズカ入って叱咤する権力者にはなりたくないと誓いました。のびのび自分を表現した絵を描ける子にしたいと、描画の勉強会にも通いました。でも結果はそのような子にしてあげることはできなかったのです。
保育園から異動になり、障害者(19才〜62才の知的障害の方々)と共に生きる施設職員になり六年が過ぎました。絵を描いていただく場面はありますが、指導は大人だからと職員はしないのです。そんな時、松本先生のことを聞いたのです。
空の絵、これまで描いたことがないくらいたのしくって、簡単で、上手に描けました。」(手紙より)
いつも、どこかで、絵に関して傷ついている人の何と多いことか。そんな人がキミ子方式で元気になっていってくれたら、こんなに婚しいことはない。
四月です。キミコ・プラン・ドウを開設して、六年目に入ります。多くの仲間と、これからもよろしく。
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