全国あちこちに絵を教えに行っているが、宿はホテルと決めてから久しい。
しかし、時々例外がある。ホテルよりも快適な宿、それが名古屋のNさん宅である。
その日、Nさん宅の台所の目立つところに貼り紙がしてあった。
〈どんなに楽しくても12時には寝ること。四月二十日〉
その夜の友人は、エスニック料理のコーディネーターの小川真喜子さん。そして『ふうてんママのオーストラリア』(学陽書房)を書いた奥村典子さん。
小川さんは、その日の絵のモデルに使った"イカ"をニンニクやセロリや彼女独特の手作りソースを入れて、あっという間にインド風イカ料理をつくってくれた。
彼女は、エスニック料理のオリジナルを何十種類もつくり、瓶詰のソースなどを名古屋市内のエスニックグッズの店に置いたりしている。
自分でもインド、チベット、タイ、ネパール、ビルマ、南米など30数カ国に行っている。その国に住み、食べた料理を日本人に合うようにアレンジし、世界の人の食生活の知恵を日本の素材でアレンジし紹介している。
彼女の作る、世界ミックスエスニック料理をいただきながら、約30カ国の訪れた国とそこで出会う人と食べ物の話。一方、ふうてんママこと奥村さんは未婚の母である。娘をつれて戸籍のない国へ二年間行っていたたのしい日々の話。
30数カ国を旅した独身女性と、独身のまま子ども生み、その子を連れて戸籍のない国オーストリアへ二年旅した人と、子ども三人つれて離婚し、ヨーロッパやメキシコを旅している私と、結婚して子ども二人いるNさんはベトナムを訪れ、と四人はそれぞれちがう状況。旅した国もちがう。
共通しているのは、たとえ少数派でも、自分の責任でくっきり生きている人の歯切れのよさ。
夜のふけるのはあっという間だ。食べ物がなくなれば、フードコーディネーターが、さっと不思議なお茶を作る。
時々〈どんなに楽しくても12時には眠る〉というビラを横目でチラチラながめ無視し、おしやべりしつつ朝焼けを迎える。小鳥の声を間く。
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