外国語訳は、キミ子方式を知ってくれている人にと、決めていた。英語訳は、古くからお付き合いして下さっている藤田悟さん。これからはアジアの時代だから、アジアの言語訳にもしたいと思っていたら、木村幸子さんが三年間の中国留学を終えて帰国したところだった。木村さんとの出会いは、彼女が中学生の時、私が広島へ出かけ、理科の時間に、一時間だけ草花を描く授業をしたことだ。彼女は高校の先生になり、広島で行われたキミ子方式の展覧会を見に来て下さり、再会。その後、広島の教室に参加された。そして、中国留学。
翻訳してもらって、はじめにぷつかったのは、中国語に「キ」と「コ」という音がないので、キミ子方式をどう表現したらいい?という問いかけであった。「日本人が見て「キ」と発音する言語「其」「副」「杷」の中から、イメージに合う文字を並ぺてはどうかと提案した。
編集者の田中さんに相談したら、すぐ反対された。「〈キミコ〉という発音が大事なんですよ。世界中の人がキミコと発音しあってこそ、共通語になりうるわけですから。キミコはローマ字表記にしましょう」一方、英語訳の藤田さんは「翻訳してみて気づいたのだけど、キミ子方式は翻訳しやすかった」と言ってくれた。初めての本日三原色の絵の具箱』(ほるぷ出版)を翻訳してくれた人も、同しことを言っていた。論理的だからだそうだ。主語、述語、時制がはっきりしている。藤田さんは「主旨は論理的、西洋的なんでしょうが、半分は日本的発想だな-と思うのはテーマね。〈モヤシ〉だの〈雑草〉〈魚〉など、そんなのを絵にするなんてね。絵というのは〈バラ〉とか〈ゆり〉とか、装飾のためのものしか、描かないでしょう?〈サバ〉なんてもの、英語にはしましたけど、サバをわかってくれる人、どのくらい、いるのかな-」。身近なものを描くという発想が日日本人的だというが、まさに、日本人は多信教ではないかと思う。万物に神が宿るという発想である。
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小さい頃、遊び回っていた野山で雑草をひっこぬく時は必ず「ちょっとゴメンネ」と言っていた。弟が川に向かって小便をする時、「川の神様、ちょっとゴメン」と大声で言っていた。
それを忘れると、洪水で復響されると信じていた。
大地を走りまわるときには、虫や雑草など、あらゆるものに、友達のように話かけていた。
大人になって、都会に出てきて、すっかり北海道の山の中での幕らしを忘れていたが〈モヤシ〉や〈ペンペン草〉を描いていると、“あなたさまは、こんなに美しいお姿をしてきたのか”と心打たれ、大自然のすばらしさに感謝したくなる。
朝陽に感謝し、嵐や吹風、タ間に脅えた日々を思い出す。
ところで、日本では〈構図〉とか〈三原色〉という単語がわかる人が多いが、外国の人には無理だろう。学校で、図工や美術の教科がない国の方が多いからだ。
絵を描くのは、一部の才能ある人がやることで、国語や算数とは全く別という考えが、より徹底している。
日本の小中学校では、美術の時間があるので〈三原色や構図〉という言葉や〈下がき〉なんて言葉が理解してもらえる。
「絵が上手な人がクラスにいたなあ」とか、上手下手は別にしても、絵を描く体験をしたことか話題になりうる。そして「構図から形、そして色をぬった、あのやり方が絵を描けなくしていたのよ」と話が展開できる。
外国で「誰でも絵が描ける方法を考えたのですけど・・ごと話を始めると「私はダメ」と、そこで会話がブツリと切れる。そして、他の話題に切り替わってしまう。
「中国語訳も、キミコの音がないので、ローマ字にしたんですよ」と藤田さんに伝えたら「中国の人、ローマ字読める人がどの位いるかな?
今、ハンバーグやジーパンが中国に入り、英語ブームになっていることは確かだけど。たとえ、 KIMIKOと記しても、KI〔キ〕やKO〔コ〕は中国語にないのだから、キミコとは発音してくれませんよ」という予想だった。英語は表音文字で、中国語は表意文字で、日本語は両方あって・・・と久し振りに非日常単滑を語るのがたのしかった。編集の田中さんは、藤田さんの英語訳の方が、キミ子さんの文より、わかりやすく格調高いと興響している。
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日本と中国の決定的な違いは、〈かわいいペットを描こう。イヌ,ネコ,うさぎ,にわとり,カメ,ザリガニ〉。それらは全部食料なのでペットという表現が合わないということだった。そこには〈おいしいし食料を描こう〉と直すしかない。そして、やはり〈サバ〉という魚の名は、ほとんどの人に理解してもらうのは難しいだろう、とのことだった。
赤、青、黄色と白を使い、一点からとなり隣へと、身近なテーマをモデルに描き、画用紙が足りなくなったら足し、あまれば切るという発想が、英語圏、中国語固の人たちに、どれほど伝わるのか、楽しみである。ちなみに、インドネシア語には、もうなっている。(海賊版ではあるが)
4月28日から5月5日まで、キミコ・プラン・ドウで、この本の原画展をする。案内ハガキの絵は、全国の通信ガ座卒業生の自画債、約60人分を並べたものだ。そこに、たまたま、キミコ・プラン・ドウに遊びに来てくれたインド人や、通信生の外国人のお友達の顔も入っている。
魚の絵をいっぱい、水族館のように集めたいと、たくさんの人から魚を絵をプレゼントしてもらった。それも展示する。本づくりの撮影中「わあ-」と歓声があがったのは、〈だいこん〉や〈にんじん〉の絵を世代順に並べた時だ。まるでそこに子どもや大人やシルバー世代の人がにっこり立っているようだった。
ぜひ、原画展を見に来て下さい。 |
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